生活習慣病外来
生活習慣病とは、食生活、運動習慣、睡眠、喫煙、飲酒など生活習慣が発症および進行する関与する病気のことを総称し、生活習慣病と呼びます。癌や心疾患、脳血管障害などの病気が含まれます。
生活習慣と関連する病気として代表的な高血圧、脂質異常症、糖尿病が挙げられます。上記3疾患は慢性的に進行し、動脈硬化などをきたし、心筋梗塞や脳梗塞など致死的な病気の原因となるため、早期に発見し、治療介入することは予防として非常に重要となります。
生活習慣病から来る病気・疾患
高血圧、糖尿病、脂質異常症、癌(悪性新生物)、脳卒中
、心臓病、動脈硬化症、痛風(高尿酸血症)、肥満症など
があります。死因別の脂肪割合ですが癌や心疾患、
脳血管障害など、生活習慣病による死因が全体の半分
程度を占めています。
高血圧
1.高血圧とは?
血圧が慢性的に高い状態を指します。正常血圧は120/80 mmHg以下であり、高血圧の基準は140/90 mmHg以上です。高血圧自体は症状はほとんどありませんが、放置していると様々な重篤な合併症をきたしてしまいます。
2.原因
- 一次性高血圧(本態性高血圧)
- 原因が特定できない高血圧で、全体の90%を占めます。
- 生活習慣(塩分の過剰摂取、肥満、運動不足)や遺伝が関与します。
- 二次性高血圧
- 他の疾患(腎疾患、内分泌疾患)や薬剤が原因となります。
3.症状
高血圧自体の症状は基本的にほとんどありません。まれに頭痛やめまいなどを訴える方もいます。症状がある場合は合併症をきたしている可能性が高いためすぐに精査が望ましいです。
4.合併症
高血圧が引き起こす主な疾患として脳卒中(脳梗塞、脳出血)や心疾患(心筋梗塞、心不全)、腎不全、大動脈瘤、大動脈解離などがあります。短期的なものでなく、長期的な高血圧が原因となるため定期的な健診や診察により早期発見することができます。早期発見後に塩分制限などによる食生活の是正と薬物療法により血圧を適正にコントロールすることで合併症の予防をすることができます。
5.診断方法
血圧の測定により診断できるため健診などで定期的に血圧測定することが望ましいです。
6.治療方法
- 生活習慣の改善
- 塩分摂取の制限(1日6g未満が目標)。
- 適度な運動(ウォーキング、ヨガなど)。
- アルコール摂取の制限、禁煙。
- 薬物療法
- 降圧薬の内服・・・利尿薬、ACE阻害薬、ARB、カルシウム拮抗薬、β遮断薬などのたくさんの血圧を下げる薬剤があります。それぞれ作用や副作用が違うため、患者様に合わせた薬剤を選択させていただきます。
- モニタリング
- 定期的な血圧チェックと医師のフォローアップ・・・年齢や食生活の変化などにより血圧は徐々に変化していきます。適切な薬剤の調整や食生活の指導が必要となるため、定期的な血圧チャックが重要となります。
7.当院での対応
- 当院の高血圧治療:
- 個別にプランの作成を行い療養計画書を発行します。
- 定期的な血液検査や尿検査などによる合併症をきたしていないかのチェックをします。
- 必要に応じて専門医への紹介致します。
脂質異常症
1.脂質異常症とは?
- 血液中の脂質(コレステロールや中性脂肪)の異常が原因で起こる病気です。
- LDL(悪玉コレステロール)が高い、HDL(善玉コレステロール)が低い、中性脂肪が高い状態を指します。
- 自覚症状が少なく、検査で発見されることが多いです。動脈硬化の原因となり、放置していると様々は合併症をきたします。
2.原因
- 一次性脂質異常症(遺伝的要因)
- 家族性高コレステロール血症など、遺伝によるものがあります。
- 二次性脂質異常症(生活習慣や疾患によるもの)
- 高脂肪・高カロリーの食生活、運動不足、肥満、喫煙、過度なアルコール摂取など生活習慣が原因となります。
- 甲状腺機能低下症などの基礎疾患も原因になることもあります。
3.症状
- 初期にはほとんど症状がないが、進行すると以下の問題が発生する可能性あります。
- 皮膚や腱にコレステロールが沈着する(黄色腫)。
- 動脈硬化による心血管疾患のリスクが高まる。
4.合併症
- 動脈硬化が主な合併症です。
- 心疾患:狭心症、心筋梗塞など
- 脳血管障害:脳梗塞など
- 末梢動脈疾患:手足の血流障害など
長期的に放置すると上記のような重篤な合併症をきたすため脂質異常症のコントロールを行い予防していくことが重要です。
5.診断基準
以下のいずれかを満たすと診断となります。
- LDLコレステロール(悪玉)140mg/dL以上
- HDLコレステロール(善玉)40mg/dL以下
- 中性脂肪150mg/dL以上
6.治療方法
生活習慣の改善
- 食事療法:
- 動物性脂肪の制限、植物性油脂や魚油を多く摂取
- 野菜や食物繊維の積極的な摂取
- 運動療法:
- 有酸素運動(ウォーキング、ジョギング、水泳など)を推奨
- 禁煙や適度な飲酒
薬物療法
- スタチン系(LDLコレステロールを下げる)。
- フィブラート系(中性脂肪を下げる)。
- 小腸コレステロールトランスポーター阻害薬(コレステロール吸収を抑える)
上記のような薬剤を使用し、必要に応じでその他薬剤も追加します。
7.必要な検査
- 定期的な採血
- 頸部エコー検査・・・頸動脈の動脈硬化の程度は全身の血管の状態を反映すると言われていることから、頸動脈エコー検査は全身の動脈硬化の程度を調べる検査としても行われます。またプラークの状態に合わせて抗血栓薬の内服など適切な対応を行っていきます。
- 心電図検査・・・胸部症状などに合わせて、狭心症など早期発見のため心電図変化等がないか精査を行います。
8.当院での対応
- 診療内容
- 血液検査を通じた脂質異常症の早期発見
- 専門的な栄養指導や生活指導
- 必要に応じた薬物療法の提案を行います
療養計画書を発行し、定期的な採決を行い、適切に脂質異常症のコントロールを行っていきます。
糖尿病
1.糖尿病とは?
- 血液中のブドウ糖(血糖)が慢性的に高い状態です。
- インスリンというホルモンの作用不足が原因となります。
- 放置すると全身の血管や神経、臓器に障害をもたらします。
2.糖尿病の種類
- 1型糖尿病
- 主に若年層に多く、自己免疫によって膵臓のインスリンが分泌されない状態です。そのためインスリン注射が必要となります。
- 2型糖尿病
- 生活習慣(食事・運動不足・肥満)や遺伝が関係してきます。中高年に多いが、最近は若年化してきています。初期は無症状ですが、進行すると様々な合併症をきたします。糖尿病の状態によってはインスリンが分泌されなくなり、インスリン注射が必要となることもあります。
3.症状
初期は無症状のことが多いですが、進行すると以下のような症状が出ることがあります。
- のどの渇き、多尿
- 疲れやすい、体重減少
- 傷が治りにくい
- 手足のしびれ、視力低下
4.合併症
糖尿病の怖さは合併症にあります。以下の「三大合併症」を特に注意します。
- 糖尿病性網膜症(失明の原因になります)
- 糖尿病性腎症(人工透析が必要になることもあります)
- 糖尿病性神経障害(しびれや感覚障害などをきたします)
さらに、動脈硬化の進行により心筋梗塞や脳梗塞のリスクも上昇します。
5.診断
血液検査でHbA1cや空腹時血糖の値によって診断します。
6.治療方法
- 生活習慣の改善
- 食事療法
- 適正なカロリー、栄養バランスの取れた食事が望まれます。炭水化物の取り方と食物繊維の摂取が重要となります。
- 運動療法
- ウォーキングや水中運動など、有酸素運動が望ましいです。
- 禁煙・節酒も重要となります。
- 食事療法
- 薬物療法
- 血糖降下薬の内服
- インスリン注射(1型、または重症例)
※定期的な自己血糖測定でコントロールを行っていきます。
7.予防と早期発見
毎年の健康診断で血糖やHbA1cを確認することが重要です。メタボリックシンドロームにならないように生活習慣を整えることも大切です。糖尿病予備軍(境界型)でも積極的に生活改善を行っていきましょう。
8.当院での対応
- 採血による糖尿病の管理と合併症スクリーニングを行います。
- 必要に応じて管理栄養士による栄養指導を行います。
当院の治療方針
医学的な根拠に基づいた生活習慣の指導をいたします。生活習慣病の改善は、まず、日常生活の改善から始まることがほとんどです。今までできなかった健康的な生活を継続していくことは、簡単なことではありませんが、日々の経過を患者さんと一緒に二人三脚で歩んでいくことを心がけます。
また、重篤な糖尿病など、高度な医療機関での治療が必要な場合には、適切な医療機関をご紹介し、紹介病院と十分な連携を取りながら、治療をすすめていきます。