虚血性腸炎
虚血性腸炎とは?
虚血性腸炎とは、大腸への血流が一時的に低下することで、大腸の粘膜に炎症や潰瘍が生じる疾患です。特に高齢者や便秘がちの方に多く、突然の腹痛や下血(血便)をきっかけに発症することがよくあります。
虚血性腸炎は一過性で自然に改善することが多い一方で、まれに重症化し手術を要するケースもあるため、早期の診断と適切な対応が重要です。
原因
虚血性腸炎の直接的な原因は、「大腸の血流が不足すること」です。大腸は腸間膜動脈という血管から酸素や栄養を受け取っていますが、以下のような要因によって血流が一時的に低下し、炎症を引き起こすと考えられています。
主な誘因:
- 便秘や排便時のいきみ
- 動脈硬化
- 高齢者
- 脱水状態
- 一部の薬剤(利尿薬、収縮剤など)
症状
虚血性腸炎の症状は比較的急に現れるのが特徴です。以下のような症状が典型的です。
- 左下腹部の突然の痛み
- 血便・下血(鮮紅色の血便)
- 発熱や軽度の悪寒
- 吐き気、食欲不振
- 腹部の張り
特に、左側の大腸(下行結腸やS状結腸)が血流不足に陥りやすいため、左下腹部痛と血便という組み合わせが特徴的です。
診断
虚血性腸炎は、問診と診察に加え、必要に応じて検査を行い、診断を確定させます。
1. 問診と身体診察
発症のタイミング、便の状態、既往歴などを確認し、腹部の圧痛をチェックします。
2. 血液検査
白血球数やCRP、などの炎症反応や貧血などを確認します。
3. 画像検査(腹部CTなど)
腸管の腫れや浮腫、ガス像などを確認し、他疾患との鑑別に有効です。
4. 大腸内視鏡検査(必要に応じて)
浮腫、びらん、縦走潰瘍など虚血による変化が観察されます。急性期は痛みが強いため、症状が落ち着いてから行うことが多いです。
治療
多くの場合、保存的治療(腸管安静)で改善します。
保存的治療:
- 絶食などによる腸の安静
- 抗生物質の使用(感染の可能性を疑う場合)
- 鎮痛剤の使用
- 脱水予防のための水分補給
症状が落ち着いた後は、消化に優しい食事から再開し、腸に負担をかけない生活を心がけます。
再発予防と生活上の注意点
虚血性腸炎は再発することがあるため、日常生活での予防が大切です。
- 便秘の改善(食物繊維・水分の摂取)
- 脱水の予防
- 適度な運動
- 生活習慣病の管理(高血圧、糖尿病、脂質異常など)
- 喫煙・過度な飲酒の制限
他の疾患との鑑別が重要
虚血性腸炎の症状は、以下の疾患と類似するため、正確な診断が必要です。
- 急性憩室炎
- 感染性腸炎
- 潰瘍性大腸炎
- クローン病
- 大腸癌
特に血便や腹痛がある場合は、放置せずに消化器内科を受診しましょう。
まとめ
虚血性腸炎は、突然の腹痛や血便を特徴とする疾患で、比較的高齢の方や便秘がちな方に多く見られます。多くの場合は安静と点滴で改善しますが、重症化するケースや他の疾患との鑑別も重要です。
当院では消化器病専門医による大腸内視鏡を用いた診断と、適切な治療を行っております。気になる症状がある方は、お早めにご相談ください。