大腸憩室炎
1. はじめに
大腸憩室炎は、憩室(大腸の壁の一部が袋状に外側へ突出したもの)に便や細菌が入り込み、炎症を起こす疾患です。近年の高齢化や食生活の欧米化に伴い、患者さんの増加が報告されています。軽度で外来治療が可能なケースも多い一方で、膿瘍形成や穿孔(腸に穴が開く)など重症化すると長期の入院が必要となったり、緊急手術が必要となる場合もあり、適切な診断と治療が重要です。
2. 大腸憩室とは
憩室そのものは多くの場合自覚症状を伴わず(大腸憩室症)、無症候で経過することが多いです。大腸の内圧が高まることなどにより、腸管の弱い部分から粘膜が外へ飛び出すことで形成されます。日本人では右側結腸(盲腸や上行結腸)に発生することが多く、欧米では左側結腸(S状結腸)に多いのが特徴です。また、個人差が大きいですが若い方は右側結腸に多くあり、年齢とともにS状結腸の憩室が増えてくる傾向があります。
3. 大腸憩室炎とは
憩室に菌や糞便が溜まると局所に感染を生じ、これが大腸憩室炎です。腸穿孔や膿瘍形成などを引き起こすことがあります。憩室炎は「小さな袋の感染症」とイメージするとわかりやすいでしょう。
4. 主な症状
- 腹痛(左下腹部または右側腹部に起こることが多い)
- 発熱(軽度〜高熱)
症状は痛みの箇所が右下腹部であった場合、虫垂炎(盲腸)と類似するため、鑑別に画像検査が重要です。特に高齢者では痛みが軽い場合でも重症化していることがあるため、注意深い診察が必要です。外来で治療を行うか、入院が必要か判断するには症状が重要となるります。
5. 診断の流れ(当院での方針)
当院ではまず問診と診察で症状や腹部有痛部位を確認し、それに応じて以下の検査を行います。
血液検査
白血球数やCRP(炎症反応)を測定し、炎症の程度を評価します。また腹痛の原因となるその他疾患がないか、肝機能障害や膵酵素などの検査も行います。
CT検査(診断の要)
CTは憩室の有無、憩室周囲の脂肪織の濃度上昇(炎症の所見)、膿瘍形成の有無、穿孔や腸閉塞の有無などを評価する上で最も有用です。軽症か重症かの判断にも活用します。
大腸内視鏡検査
急性期(炎症が強いとき)には内視鏡検査は避けます。これは内視鏡操作により穿孔リスクが増すためです。一方、炎症が落ち着いた後に実施する大腸カメラ検査は、憩室の状況確認に加え、大腸がんなど他疾患の除外に極めて重要です。
6. 治療
軽症(外来治療が可能)
- 抗生物質の内服
- 消化の良い食事、場合によっては一時的な絶食
- 安静と水分補給
一般に1週間程度で改善することが多いですが、痛みや発熱が持続する場合は早めの再診が必要です。
中等症〜重症(入院治療)
- 抗生物質の点滴
- 絶食と輸液管理(腸管を安静に保つ)
- 膿瘍が形成されている場合は画像下ドレナージ(必要時)
- 穿孔などがある場合は外科的治療(手術)
7. 再発と予防
大腸憩室炎は再発する可能性があり、報告によっては再発率が数割にのぼることがあります。再発予防には便秘改善や腸内圧を上げない生活習慣が重要です。
生活上のポイント(再発予防)
- 食物繊維を十分に摂る:野菜・果物・海藻・きのこ・全粒穀物などを意識して摂取します。
- 水分をしっかり摂る:便を柔らかく保つために1日1.5〜2リットルを目安に水分摂取。
- 規則正しい排便習慣:便意を我慢しないこと、毎日一定時間のトイレ習慣をつける。
- 適度な運動:ウォーキングなどの有酸素運動は腸の蠕動を助けます。
- 暴飲暴食や脂肪の多い食事を避ける:腸内環境を整えることが大切です。
8. 当院での診療体制
鶴見小野駅前内科・内視鏡クリニックでは、消化器病専門医・内視鏡専門医が在籍し、症状のある患者さまに対して迅速に評価を行います。必要な血液検査とCT検査を手配し、急性期の治療方針(外来治療か入院治療か)を的確に決定します。
また、炎症が治まった後の大腸内視鏡による精査を重視しており、他疾患(特に大腸がん)の鑑別に力を入れています。鎮静剤を用いた苦痛の少ない内視鏡検査を実施しておりますので、ご希望があればご相談ください。
9. よくある質問(FAQ)
Q:大腸憩室炎は放っておいても治りますか?
A:軽症であれば抗生物質の内服などで改善することが多いですが、自己判断で放置すると膿瘍や穿孔など重症化するリスクがあります。腹痛や発熱がある場合は早めに受診してください。
Q:憩室が見つかったら必ず手術が必要ですか?
A:いいえ。多くは無症候の憩室症のままで手術は不要です。頻度は多くはありませんが穿孔した場合などは緊急出術が必要となる場合もあります。
Q:大腸内視鏡検査はいつ受ければよいですか?
A:急性炎症期は内視鏡を避けます。症状が落ち着いてから(通常数週間後)、治癒後の検査として実施することを推奨します。
10. 受診のすすめ
腹痛、発熱、下血、持続する便通異常がある場合は放置せず、早めに受診してください。特に高齢者や免疫が低下している方は症状が軽く見える場合でも重症化しやすいため、迅速な評価が重要です。
